PQ'99 プラハカドリエンナーレ国際舞台美術博覧会
PQ'99 JATDTコミッショナー大田 創
 今回も六月のプラハは素敵だった。街のあちこちに聳えたつ黒ずんだ秘密の塔が我々を見下ろす。九時近くなってやっと辺りが暗くなると夕陽に映えて表情を変えていたプラハ城が、いつのまにかライトアップされて浮かび上がっていた。金のデコレーションをおしゃれに使った世紀末のセセッションスタイルの建築群がチャーミングで楽しい。十七世紀以降、破壊的な戦斗がなかったために残ったプラハのこの古い街並みが素敵に我々を刺激する。
 このような街で舞台美術の祭典「PQプラハカドリエンナーレ国際舞台美術博覧会」が開かれるのは本当にお似合いである。
 「PQ」は1967年の第一回以来四年に一度開催されてきた。1891年産業博覧会のために建設されたアールヌーボーのグラスハウス「産業宮殿」。
 地域別に見ると、ヨーロッパから29ヶ国、南米3ヶ国(ブラジル、アルゼンチン、チリ)、北米3ヶ国(アメリカ、カナダ、メキシコ)、アジア4ヶ国(日本、中国、香港、韓国)、アフリカ2ヶ国(エジプト、南アフリカ)、オセアニア2ヶ国(オーストラリア、ニュージーランド)。
 地の利の問題はあるが、国の数を考えればアジア、アフリカの国々の新しい舞台芸術への入れ込みはまだまだ貧しいと思わざるを得ない。欧州では東欧諸国が12ヶ国をしめ、作品の搬入が比較的安易であるということを差し引いてもこれらの国々の熱意が目についた  展示は4つのセクションに分かれている。
1)ナショナルセクション(各国の現役美術家による過去4年間の作品の展示)
2)スクールセクション(学生の作品展示)
3)劇場建築セクション
4)テーマセクション
(各国が自国の故人を含む最重要作家を1人ピックアップして展示する)
 どの分野も国と個人が賞を競う。どの国も自国の事情やねらいにより好きなセクションに出品できる。日本はナショナルセクションとスクールセクションに参加した。ナショナルセクションでは各国が見本市のようにスペースを買う。このスペースを自由にレイアウトし、作品を展示する。日本やアメリカはそれぞれ16人の作家が参加したが、イスラエルは日本よりもっと小さなスペースで23人が参加していた。もっともフィンランドのように1作家の作品で全スペースを埋める国もある。展示方法も日本、カナダ、スペインのようにパネル、模型、衣裳の実物などを主体にオーソドックスに展示した国もあれば凝った構築物を立ちあげる国まで様々である。
 今回最大面積を使ったのはオランダだった。外周を模型を埋め込んだ壁で囲み、中にパフォーマンスを見せるダンボール製の劇場、ビデオを見せる小屋、照明塔のある広場を作り、並々ならぬ力の入れようであった。血の付いた衣裳や小道具で血生臭い展示をしたルーマニア。
 巨大な机を船に見立ててコンセプチャルな展示をしたニュージーランド。小劇場を作り、室内に濡れた2枚の水着を配置して壁のしみが現代アートしていたノルウェイ。ゴミの山の上に作品をのせたブラジルは金賞をとった前回に続いて告発姿勢に満ちていた。天井付きの室内に階段状の客席を組み上げて12本の作品すべてをビデオだけで整然と見せたドイツ。床をぶち破ってインスタレーションを作った南アフリカ等々。 こうして、このセクションに参加した世界の舞台美術家の数はおそらく300人を越えるだろう。イギリス、スペイン、イスラエルとベラルーシ、ラトビア等の東欧諸国のレベルが高いというのが私の印象だった。この中から次の国と人々が受賞した。

【コスチューム】
ゴールドメダル Joan Guilien 47生(スペイン)
ゴールドメダル Jona Prekova 56生(チェコ)
優秀賞 Rakefet Levy (イスラエル)
優秀賞 Elzbieta Terlikowska(ポーランド)


【セット】
ゴールドメダル Jaume Plensa
55生とその仲間(スペイン)
優秀賞 Jon Berrondo (スペイン)
Paul Brown    (英国)
Stetanos Lazaridis(英国)
ユネスコ賞 (新人デザイナーと新進のグループ、また学生部門に対して) ナショナル部門のエストニヤ、英国、ニュージーランドのデザイナー達、学生部門のオランダ、英国、イスラエル、ラトビア、韓国


PQの最高賞「ゴールデントリガー」はナショナル部門のチェコの展示に送られた。チェコの若手美術 家達が数週間かけて芝居小屋のような構築物を作り、騒音付きで派手にアピールした。内部は迷路のようになっていてゴチャゴチャと展示物が配置されていた。  日本からはオープンの日、出展者7名を含め、JATDT会員、大学関係者と学生、他で80名以上が集まり、賑わった。今回は日本は特に経済的に苦しく特別なことはなにもしなかったが、日本の展示を気に入ってくれた他国の関係者やお客様は多かった。  今回の反省点は「PQ」を舞台美術展の頂点として、そこに日本からすばらしい作品を送り込むための選考システムが確立されていないということである。今年、国内選考会に出品して下さった会員は26名でその中から16名を選んだ。「PQ」直前に国内展を催して数百人の中から出品者を20数人選んだ英国に較べるとこれはいかにもさびしい。  またこの博覧会を多くの人々、ことに演出家や照明家に見ていただきたいという点を強張したい。ともかく誰にとっても発見の多い行って損のないプラハである。
 次回は2003年の6月。ツアーのお申し込みは2003年3月から。ぜひおこずかいを貯めておいて下さい。