『トーキョー裁判』『天皇と接吻』をめぐる
演出家と美術家のストレートでフレキシブルな〈関係〉Part.5
演出家 坂手洋二
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美術家 加藤ちか
聞き手 土屋茂昭 記録 武井三保  梅ヶ丘カフェ・パスピエにて
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土屋 加藤さんの方から演出プランを出したりとかは? 例えば『ト−キョ−』だったら一番最後に東條が向うに去って行くじゃないですか。船首が開いてね。ああいうのもある意味大事な演出部分だと思うんですけれどもああいうのは例えば加藤さんの方から?
坂手 あれはどっちかと言うと加藤ちか的だったね。
加藤 そうでしたっけ?
坂手 僕なんかはタラップを階段を降りて来るだけで大感動だったんだけど、はけて行くのは別にそんなに最初からこだわりがあったわけじゃないんです。
加藤 それこそ膨らませる時の構想で、そりゃもう船にして、最後は飛行機で終わるんだから、やっぱり屋台崩しでしょうって言っただけですよね。
坂手 そう、だからあれが開くこだわりは、加藤さんが僕の10倍位あった。
加藤 こだわりというか・・・本当だったらあそこがバラバラに板が外れて、しかも組木になっていてなんて考えたけど、そこまでは出来なかったんですよね(笑)でもやっぱりこういう風(と手で船首の形を作る)にはなっていないとダメだよねえって言って。で、飛行機のシーンでセリを使うという事は坂手さんの中ではもう決まりであったから、それで船首から去って行く事になったんですよ。その前にその発想がなんで出たかっていうと、トラムの外につながる赤いドアを開けたいという演出家がいたから(笑)そっちに向かわせるには船首を一回開けるしかないし・・・開けましょうか?と言ったら舞台監督は屋台崩しだ屋台崩しだと言って喜び始めたんですね。凄く道具を愛してくれる人だったから、すごく頑張って作ってくれた。で、ちゃんと開く様なものが出来ましたね(笑)そこで舞台監督がおっと待った、そんな事言っても金が無いと出来ませんよという舞台監督だったら開かなかったかもしれない。
土屋 それ大事ですよね。
加藤 うん大事大事
坂手 文句言いながらもとことんやるからね、あの人(森下紀彦氏)。
土屋 そういう意味では舞台監督大事ですよね。特にこういう形で手作りの物が多ければ多い程大事ですよね。
坂手 舞台監督がめちゃくちゃ乗りがいいから(笑)やっぱり両方(美術家と舞台監督)から上手く言い含められるとこっちもその気になりますよね。
加藤 やっぱりあの時ああいう風な暴走アイディアを暴走に留めないで、それをセーフティーな所に落ち着かせてくれた・・・本当に良い人材というか有能な方なんですよ。
土屋 聞いていると関係している人全員有能な人材みたいですね。
加藤 いやいや本当に。こう言ってはなんですが屈指のスタッフですね。先程の音響家も照明家も舞台監督さんも皆活躍されててお忙しいですよ。もう、まあ自慢ですよね。
坂手 そうだね。俳優にも今回こんな芝居だからこれ面白いだろうって、面白がって貰わないとパワーが出ないのと同じで、やっぱり、シアタートラムで客席引っ込めてやるけどさあどうする?ってニヤニヤしながら反応を見ているのが楽しいんですよね。『天皇〜』の場合も基本舞台はたったの3畳間だぞ、どうだ凄いだろうって。後はやっぱり皆でアイデアを出して行くのが一番楽しい仕事になるんですよね。
加藤 やっぱり打ち合わせの段階で、構想が大きかったりして、装置を作る側に難関を与えている事でどうしようと思わせる、と同時に、相手もワクワクして作りたくなる様な所に持って行ければ、こっちとしては本当に作品としても美術としてもちゃんと掴めたなっていう感じがしますね。あと本当に恵まれているのは舞台監督がNO という言葉を多く発しないことですね。出来無いとは言わないんですよ。あったとしてもそれは本当に観客の安全、役者の安全、そして、作品を成功に導くためのもの。たとえNOがあったとしても最大限の良い方向へ向かうプラスの意見を言える人と組んでいるという事実が本当にありがたい。
土屋 NOと言う事に対して抵抗感の無い仕事はやっちゃいけないですよね。
坂手 そう、だからそれは出来ないの?と聞いて出来ないよって言われちゃうとがっかりする事があるんですよね。
加藤 もう一つさっきの小劇場の話じゃないんですけれども、お金があったら出来るよねって、それって当たり前で当然の事なんだけれども、でもお金が無くても考えて出来る事があったんだなっていう良い結果だったと、今回の2作品は言えるんじゃないでしょうか。
坂手 いやお金が無い時にこそやるっていうか、合理的にやることで実現しちゃうから。大体アイデアが湧いた時にこれはこういう風に出来るから大丈夫なはずだって、絶対もう水面下で考えながらでないとアイデアを出して来ないんですよ、この人達は。そういう意味では舞台監督がそんなにストップしないのも含めて結局何か案があるから言い出しているところはあるんですよね。
土屋 本当に羨ましいですね、自分達で恵まれたスタッフって言える関係というのは。やはり作品づくりの基本は、人と人の関係だということでしょうね。今日は本当にありがとうございました。