『トーキョー裁判』『天皇と接吻』をめぐる
演出家と美術家のストレートでフレキシブルな〈関係〉Part.3
聞き手 土屋茂昭 記録 武井三保 梅ヶ丘カフェ・パスピエにて
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土屋 坂手さんは、加藤さんが入ってくるまで殆ど自分で美術プランもやっていたということですが、美術的なイメージでぶつかったりしないんですか?
加藤 いやーしょっちゅう(笑)
坂手 いや、そんなにぶつからないじゃん。
加藤 そう?
坂手 実はね音響プランも僕ずーっとやってたんですよ。95年に市来さんの所に頼んでからやっとプラやってもらえるようになって、それから僕なんてほとんど何にもして無いんですよ。たまに音持って来いと言うからこの間も持っていったんですけど、・・・まあ美術家とか音響家とか照明家とか特にプランナーやオペレーターという人達はもう俳優と同じなんだと考えてますから、なるべくまかせるべきところはまかせるようにしています。チームワークも結構いいんですよ。同じメンツで5年位やってるから。照明家の竹林さんは僕の中学の時の同級生で劇団公演2回目からずっと、加藤さんももう9年間、音響の島さんにもずっとやってもらってるから。もうずいぶん長く同じメンツでやってますね。
土屋 坂手さんの言葉にならない思考回路もある程度目を見れば分かる訳ですね。
坂手 というか僕が居なくても、もう皆勝手にやってますよ(笑)
加藤 なかなか言葉にして貰えない(笑)だからぶつかると言っても、最初の段階ですね。もう見えて来た段階ではぶつからないですよ。
坂手 「そうゆうんだったらこっちに決まっている」とか、「だったらこうしなきゃダメだよ」とか出てくる為には一回ぶつかっておかないと。でないと今どこの話をしているのか分からない。「ああ、ここの落とし所をこんなふうに見つけようとしてるんだな」って理解するためには、一度はぶつかっておかないとね。でないと、その後の話って結構しずらい所があるんだよね。「話はこれで終わりじゃないんだよ」って思っている時に話の先回りされてしまうこともあれば、逆に僕の説明がいっぱい言い過ぎて混乱させてしまったりとか。
土屋 新作を書く場合には大体どの位前から最初の打ち合わせというのは始まるんですか?台本が有る無しは置いといて。
坂手 一ヶ月半前位ですね、早くて。
加藤 私ここ何年も発注リミットギリギリまで引っ張ってますよ。
坂手 固まるのは、そうだね、ギリギリだね。そういう意味では。
土屋 発注リミットというのは2週間位前?
加藤 2週間前で決まったら私はあんまり心配しません(笑)おかげで私は最近ちょっとやそっとの事では驚かなくなってます。
土屋 俳優さんが入って稽古するのも大体40日前後?
坂手 大体40〜45日前後ですね。
加藤 もちろん早めに情報提供もあるし構想も聞いて、たとえば演出家として持っている坂手さんのアイデアもあるけど、空間の捕らえ方として坂手さんのアイデアをどう具体化したら面白いだろうかと考える時間も欲しい。具体的にどう芝居をからめるかという事で・・・要は稽古と同時進行ですよね。打ち合わせもたとえば稽古場近辺でとか。稽古も見るけど稽古後もエンドレスで打ち合わせが繰り広げられますね。
土屋 加藤さんの装置というのは必要以上に主張はしないけれどもきちんと存在しているという感じがする。またそうでないといけないような空間を作っているという感じがするんだけれども、加藤さんタイプの美術家と作家タイプの美術家と考え方も違うと思うんですよ。坂手さんは例えば作家的な仕事をする人と一緒にやってみようというのはあまり考えない?
坂手 これは美術作品なんだから何もしないでください。と言われると僕はお手上げになっちゃう。それでは額縁に入れて周りでなにかやろうかって話になっちゃうので、それは難しいんでしょうね。だから作家と制作と演出家の区別が僕の中で無いようにお互いの領域を決めないで共に一緒に作っていくという信頼関係のもとに、編み出してるという感じですね。片方で技術的には必要条件をきちんと押さえつつ、一つの世界として求心力を持ったものにするということを専門家としての力量をもって対応してくれる人がいる。それはまかせてみようと。後はコミュニケーション自体をやっていればいいという良さだと思うんですよね。
加藤 やっぱり現実的には、コンセプトは大切だが、ディテールに予算をかけすぎるわけにもいかない、じゃあ最大限どういう演出効果が引き出せるかということを打ち合わせておかないといけない。それこそTPTの芝居(令嬢ジュリ−)を見た時にあの坪数!あそこの3畳分あればうちのセットは全て建つ。
一同 (笑)
加藤 それにしても舞台美術ってこうだったなあって思いながら帰りました、私・・・これからですよね燐光群も、冗談な話でこれから私達も屋根がつけられるかもって、別に屋根が絶対的に欲しい訳じゃないんだけれどもある一つの欲望がありますよね。
坂手 屋根作ると照明家が怒るからなあ(笑)
加藤 天井があったとしても無かったとしても照明の手足をもいでしまうんだったら何の意味も無い。でもああいう成功例も見てしまったらやっぱり・・・。装置としても色々照明機材が組み込まれてましたけど、そういう風に照明のプランも頭に入れて、キチンと美術プランに入れられれば、色々広がるもんだと思うし。
土屋 プランする人達は、皆ある程度の制約があると制約を自分の中でプラスに変化させようというか、逆転させようという反作用が働くんだと思うのですが。
坂手 それありますよね。逆に加藤さんも何やってもいいよと言われると何も出来なくなってしまう。好きなようにやんなさいと言われると「う〜ん」となってしまう。
土屋 照明とのバトルは無いんですか?
加藤 芝居のテイストとかの考え方の話は、逆にもう作ってしまったものを全て委ねられる関係がここではありますね。バトルというのではなくて。
坂手 それはもう凄いコンビ。装置の色味も含めて「照明家から見てこうだ」という判断をしてもらったりする場合もあります。『天皇〜』の床の鉄板もね、照明がこうだろうから床は鉄板で行こうかなというのが僕にはありましたね。結局どの場合も照明が見えて来た時から割と絶対大丈夫というのがある程度あったりして。
加藤 けっこう迷ってましたけどね。竹林さんにしても私にしても、新作というのはもしかしたら自分達が一度もやった事が無いものを演出家は求めているかもって思える時、発想の充実感とかありますよね。だから自分が演出家の求めているものについていけているかということの確認の連続です。それはもう照明家も美術家もそうなんだと思うんですよ。
土屋 『天皇〜』の床って鉄板でした?
加藤 ええまあ・・・何だと思いました?
土屋 僕らで言うテントカラーみたいな硬質なものを塗っているのかなあって。
加藤 素材買うよりたぶんその方が高価だったんですよね(笑)
土屋 それはどういう狙いで鉄板だと?
加藤 発想としては、木があって鉄が囲んでという素材感の発想が最初にありました。でも現場に行ったら実はもっと映り込ませたくなって、鉄板に色を塗ったはいいが乾かなかった(笑)。現場でいきなり思い付いた事をやっちゃいけないっていう教訓。それと、劇場(スズナリ)で「ああ、こんな重いもの敷いちゃって、これが木造構造の2階の劇場だったらやばかった」って言ったら「・・・ここ木造構造の2階の劇場だよ」なて言われて、「床大丈夫!?」って。
土屋 そんなに重い鉄板でした?
加藤 厚いというか重いというか、旅でも廻るからある程度の強度は必要でしたから。化粧で使う最低限のだけでは使い廻しも出来ないっていう現状もあって。下の階の構造、突っ返棒しましたかね?結局。
坂手 舞台監督サイドがね、この移動屋台の鉄は一旦沈んだらこれ以上沈まないっていう判断があったから、じゃあもう人乗っけちゃえって。大勢乗るのをやりたかったんだよね、あれもその判断が早かったのは、チームが良かったからですよね。
加藤 私達劇場の床抜いてたら結構有名になってましたよね(一同笑) |
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