『トーキョー裁判』『天皇と接吻』をめぐる
演出家と美術家のストレートでフレキシブルな〈関係〉Part.1
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演出家 坂手洋二
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美術家 加藤ちか |
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聞き手 土屋茂昭 記録 武井三保 梅ヶ丘カフェ・パスピエにて
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土屋 まず、作家で演出家の坂手さんと美術家の加藤さんの本を貰っての一番最初の打ち合わせはどういう始まり方をするんですか。
坂手 9割方は本は無い(笑)
加藤 すごいアバンギャルドな始まり方(笑)でも次(の舞台)は何をやるかを話す。
土屋 ということは何かプロットみたいなものがあって演出というか作家として何かスト−リー展開みたいなものを話す?
坂手 企画書みたいなものを渡して、あと台本の最初のト書きみたいな「こういうものを舞台でやりたいな」というものを昔は長々2ページ位書いてた。最近短いけど、そういうのだけは書いてねって言われる。
加藤 最近は冒頭セリフから始まります。
坂手 そう、昔はいっぱい書いていたから、考えてみたら違う演出家に渡す時なんか、『海の沸点』なんかはト書き3ページもあるのね(笑)ものすごい細かいの。
加藤 人に渡す時にはそうですね。
坂手 うーん、だからね、『現代能楽集』とか『小泉八雲劇場』といっていたいわゆる素舞台の能舞台の様なもの、仮設の能舞台を作って、橋がかりが両奥にあって、能舞台と違って例の松の木が無くて奥が真っ暗やみで、という事だけ決まってるシリーズがあって、これ(のシリーズ)だけでもかれこれ6・7本ある。でその前に「それでいくんだけどどうしようか?」という話をすると、舞台が決まってるんだったら私は何するのってふてくされる(苦笑)
土屋 たとえば『トーキョー裁判』だと観客がまず下に降りて地べたに座らされますよねああいうアイデアはどちらから出るんですか?
坂手 あれは途中途中なんですよね、僕はどちらかというとこれはスタンディングで途中で座らせる様な感じに思っていたから。でもどうしてもこれは長い話だから座らせようという話になって、だったらやっぱり雛壇いるよねって話になってった。
土屋 という事は一番最初に船倉へお客さんを誘導して、そこにはお客さん用の椅子は作らないという事は始めから構想として打ち合わせの中に出て来ていたんですか?
加藤 それはもう、逆に最初の冒頭のシーンが何分かあって、その段階まではどういう形でも見せられるんではないかと演出的な算段があって。
坂手 そうですね、芝居の途中で傍聴席にお客さんを案内しましょうっていうのはあったんだよね。
加藤 それよりも傍聴席に至るまでをどうしようか?というのが一番プランの決まらなかった所で・・・傍聴席をああいう風に側面にするってなった段階でもうあっという間にセットの構成は出来ました。
坂手 わりとね、側面というのは結構始めからあったような気がするんですよ。ただ僕の方が、そこが専門家には負ける所で、僕は「船のセット」とはいってもどっか「船」と言ってれば船に見えるだろうと。極端に言うと両側に客席があって船らしい何かがあればそれは船に見えるはずじゃ無いかと思ったら、やっぱり何か上に通ってる構造物のようなものが無いと船に見えないとかね。最初はもうちょっと抽象的な、上の方を鉄骨の骨組みみたいのが通ってるとか。でも、僕は何か、実用的でない飾りがいやなんですね。何か抽象的に見えるのが嫌だったのでこう、うにゅうにゅ言ってたら「じゃあ船を作るしかないじゃん」ってぷんぷん怒り始めて(笑)
加藤 ぷんぷん(笑)
坂手 それじゃあ金がかかるじゃんって、こっちもぷんぷん怒り始めて(笑)
加藤 最初はここの劇場(シアタートラム)は十分船に見える、セットが無くても出来るって言われた(笑)やっぱりその辺のバトルっていうか、モノがどんどん作りたくなっている者に対しての説得が始まるんですよね。ですから最初から絵が面白いからさあ行きましょうではない。構造と例えば閉じ込めたりとか覗かせたりとか、もちろん坂手さんの方のアイデアもあるんだけど、こういうところまで大体ナビゲート出来たとしても最後にその造型に到るまで作りきらしてもらえるかどうか・・・やっぱり最後の詰めは凄かったよね(笑)
坂手 でも最初は、放っといたらどんどん膨れるに違い無いから牽制するんです。作家やった上に制作者も兼ねているから。なにか押さえようとすることを最初にしておかないと暴走がはじまるからね。最初はだから、ガランとした空間で行こうと考えていて、「船」って言っちゃえば船に持ち込めるんじゃないかなあって。これはやっぱりトラムのサイズに対して具体的に人が入った時、セット組んだ時にどうなるのかなっていうイメージがまだ無い段階では、もうちょっと違うイメージがあったのね。まあ基本的にいつも僕が制作サイドの人間として言う意見でついつい・・・後で「やっぱりやっちゃうしかないあ」ってなるんだけど。つまりね、何も無い状況を作る為にもセットは要るんだよという当たり前の事がありますよね、そこらへんを「でも無くてもいいんじゃない」って言っておく。いざ決まったら「もうやっちゃえ」ってなっちゃうんですよ
土屋 『ト−キョー〜』は随分劇団員の方が手を付けて?
加藤 大分じゃないですよ。
土屋 ほとんど?
加藤 船大工と化して毎日毎日朝から。
土屋 その割にはあのカーブ(船の舳先のカーブ)はよく出来ていた。
加藤 はい、それはもう。ダメ出しまくりましたから(笑)
坂手 真直ぐにただあるのでは無くて、ここにアールがあるでしょ、で、このアールをどうするかでね。それをやると大変だよって舞台監督の森下紀彦に言われた時に自分たちでやってほんとに綺麗に出来るの?ってすごく意地の悪い事言ったらそれまでですけどね。そんな中でアールの骨組とか部分的には発注したのですが、実際にはあまりにも大きな物量なので皆で作るしかなくてね。まあいざ現場に入ると製作サイドの責任が強くなるよね。で、やっぱり「これ、鉋足りない」ってなったら「買ってこい」って「何個までいいんですか?」「2個」って(笑)2個買っただけで一日早く済んだねって、そんな日々の思い出ばかりが・・・
坂手・加藤 く〜(と泣く振り)
土屋 あの時はたしか劇場が、たまたま長期間借りられたんですよね?
坂手 スタートはそうなんですよ、芸術監督の佐藤信さんが鐘下辰男さんと永井愛さんと僕にそれぞれまとめて4週間(トラムを)貸そうという事になって、その間何日公演やってもいいよと。例えば3週間仕込んで1週間しか公演しなくてもいいよという様な言い方をしてくれたのね。極端な事やってもいいよと、そういう風に作っている劇場なんだからと言って頂いたので気をよくして。僕らは佐藤さんの言葉を信じて「やったー」と思って。作業場も使いたいほうだい、長い間仕込みも出来るぞと思ったら必ずしも劇場の方々全員にはそういうコンセンサスが浸透して無かったみたいで「なんであいつらはこんなに長い間やるんだ」と。
加藤 お盆の辺りだったので皆お盆返上になってしまって。
土屋 劇場の人達も?
加藤 (うなずく)
坂手 ある種の合理性で言えばそれは無茶だろうね、確かにね。でも結果的にはたいへんよいコミュニケーションがとれました。
土屋 でも思想として非常に正しいですよね、公共の劇場でせっかくゼロから作っているんだから。劇場のスケジュールを左右出来るという意味ではそういう形で制作する段階から全部渡されたんだから、理想的な形だなという気はしますね。
加藤 皆さんにも「贅沢ね」とか、まあ大きさもあるので予算的な面も凄いといわれましたが、一番贅沢なのは時間ですよね。だから逆に私達はお金と時間で出来るものの形が変わってくると思うんだけれども、その恵まれた時にこんなに思いっきりやらしてもらえたというのは凄い良い現場だったねえって。 |
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